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2010年度は実質1%強のプラス成長も、残る厳しい景況感
〜円高には歯止めがかかる可能性、デフレ脱却ならず〜

2010年度は実質1%強の成長
 わが国の景気は持ち直しの動きが続いているが、今年前半に踊り場局面に入る懸念が高まっていた。公共投資の減少、経済対策による景気押し上げ効果の一巡、所得・雇用環境の改善の遅れを背景とした個人消費の低迷などが景気を下押しすることが懸念されたからだ。
こうした情勢から政府は昨年末に緊急経済対策を取りまとめた。さらに、輸出の増加基調が続く見込みであることや子ども手当の支給開始などの政策効果によって、景気が二番底に陥る危機は回避される見込みである。
 この結果、2010年度は踊り場を挟みつつも、ごく緩やかな回復過程を辿り、実質成長率は1%強のプラスとなろう。もっとも、主に海外の景気情勢の改善に伴う輸出の増加と経済対策による下支え効果にけん引されたものであり、国内民需は弱い動きが続くだろう。企業が過剰設備と過剰雇用を抱える中にあって、民需の回復にはなお時間を要するとみられるからだ。10年度末になっても、企業の設備、雇用の過剰感は十分には解消されていない可能性が高く、景気回復の実感が乏しい状況から抜け出せないだろう。物価の下落が続くデフレの進行で、生活実感に近い名目成長率は0.3%程度のマイナスにとどまるとみられる。



外需がけん引、内需は緩やかに持ち直し
 鳩山政権は内需の拡大による景気回復のシナリオを描きたいと思われるが、わが国は人口減と少子高齢化で内需が伸びにくい経済構造になっているのに加え、今回の不況は外需の急減が主因であることから、新興途上国のように内需で景気を良くする姿は予想しがたい。
 内外需の動きを詳しく見てみると、新興国経済の力強い回復が目立ち、10年度もアジアを中心とする海外需要の回復を受けて、輸出・生産の持ち直しが続き、外需が景気をけん引する状況が予想される。アジアの成長を取り込む形で業績が回復する企業がさらに増えるだろう。
 内需についてみると、個人消費は雇用者報酬の落ち込みが大きいため、景気を下支えする力が弱まっている。家計の所得環境が厳しい中、子ども手当の支給が家計の所得を下支えするが、09年度に大きく増加した耐久消費財の反動減もあり、10年度個人消費は基調としては低調に推移するだろう。
 住宅投資については、住宅価格の低下期待や厳しい雇用所得環境、住宅ローンの低金利継続期待を反映して、住宅需要は極めて弱い。しかし、住宅着工は足元の水準が極めて低いこともあって、さすがに下げ止まりの気配が出てきていることに加え、住宅ローン減税や贈与税軽減措置、住宅版エコポイントの創設などが住宅着工の下支え材料となることが期待され、10年度は緩やかな上昇基調を辿ろう。ただし、住宅着工は低水準での推移が予想され、国内不動産市場が本格的に回復に向かい始めるのは2011年度以降にずれ込むのではないか。
 次に、民間設備投資を取り巻く環境をみると、世界経済の持ち直しを背景に、生産は増加基調を維持し、企業利益も売上高の増加、コストの削減効果を背景に改善が続くだろう。しかし、販売価格の低迷などにより利益の改善が小幅にとどまるうえ、企業の設備過剰感が強いことから、10年度設備投資は回復に転じるものの、小幅な増加にとどまろう。投資を必要最低限なものに抑制する企業が多く、景気をけん引していくには力不足である。
以上を勘案すると、10年度中に個人消費や企業の投資が景気をけん引する自律回復軌道には戻れないとみられる。



企業を取り巻く環境変化が早い年
 足元の景気持ち直しは脆弱な基盤の上になりたっている。景気の下振れリスクには目が離せない状況が続くだろう。景気下振れリスクとしては、米国経済・中国経済・雇用情勢の悪化、デフレ・円高の進行などだ。年度内に円高に歯止めがかかる可能性は高いが、デフレ圧力の高まりは要注意。家計の節約志向に根ざした「価格破壊」が進展しており、物価の下落は広がりを見せている。10年度末の時点でもデフレ解消のメドはたっていないだろう。
 景気の上触れ要因は、新興国市場の予想外に速い景気回復や鳩山政権の経済政策への信頼の回復などだ。現状では、政権への信頼回復は期待しがたいが、新興国市場の予想外に速い回復は期待できるのではないか。



 こうした状況下、10年度は2つの意味で企業経営を取り巻く環境変化が非常に早いだろう。一つは、厳しい不況の後に起こる昨年から続く経済構造の急激な変化。新興国を生産基地としてではなく、大きな消費市場と位置付ける企業が急増しているのも、世界経済の構造変化への対応だ。百貨店業界など急激な国内市場の変化に見舞われて苦戦している企業も多い。
二つ目は政権交代に伴う政策変更による影響の本格化。すでに地球温暖化対策への取り組み強化を見越して動きだした企業は多いが、高速道路無料化などの影響はこれから本格化する。業界・地域ごとに様々な影響が及ぶ施策も多く、機敏な対応を求められよう。

CNS特別顧問 島崎 光男

| 経済 | 11:59 | - | -

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